2021年9月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
第1問:FP2級生保顧客(2021年9月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(60歳)は、妻Bさん(61歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。 <Aさん夫妻に関する資料> (1) Aさん(1960年11月11日生まれ・会社員)
(2) 妻Bさん(1960年5月6日生まれ・専業主婦)
※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
問1
はじめに、Mさんは、Aさんに対して、Aさんおよび妻Bさんが65歳になるまでに受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選びなさい。
「老齢厚生年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、経過措置として、老齢基礎年金に係る( ① )の受給資格期間を満たし、かつ、厚生年金保険の被保険者期間が( ② )以上あることなどの所定の要件を満たしている方は、65歳到達前に特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
1960年11月生まれのAさんは、原則として64歳から、1960年5月生まれの妻Bさんは、原則として( ③ )から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます」
〈語句群〉 イ.1カ月 ロ.1年 ハ.10年 ニ.20年 ホ.25年 ヘ.61歳 ト.62歳 チ.63歳 |
問2
次に、Mさんは、Aさんに対して、公的医療保険について説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが同一月内に同一の医療機関等に支払った医療費の一部負担金等の額が自己負担限度額を超える場合、所定の手続により、その支払った一部負担金等の全額が高額療養費として支給されます」
- 「仮に、AさんがX社に引き続き勤務し、業務外の事由による負傷または疾病の療養のために労務に服することができず、連続して3日間休業し、かつ、4日目以降の休業した日について事業主から賃金の支払がなかった場合、所定の手続により、4日目以降の休業した日について、傷病手当金が支給されます」
- 「傷病手当金の支給額は、休業1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額となり、その支給を開始した日から2年を限度として支給されます」
問3
最後に、Mさんは、Aさんに対して、Aさんが65歳以後に受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>および下記の<資料>に基づき、次の①、②を求めなさい。なお、年金額は2021年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。
①原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額
②原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額
解答・解説
問1
解答:①ハ ②ロ ③ト
①と②について
老齢基礎年金に係る10年の受給資格期間を満たし、かつ、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あることなどの所定の要件を満たしている方は、65歳到達前に特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
③について
1960年4月2日~1962年4月1日までに生まれた女性の方は、原則として62歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
問2
1 | × | 「その支払った一部負担金等の全額」ではなく、「その超えた部分の額」が、高額療養費として支給されることになります。 |
2 | 〇 | 「業務外の病気やケガで療養中。」「療養のための労務不能。」「4日以上休んでいる。なお、会社を連続して3日間休んだときに、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。」「給与の支払いがない。なお、傷病手当金の額よりも給与の額が少ないときは、傷病手当金の額と給与の額との差額が支給されます。」等が傷病手当金の支給条件です。 |
3 | × | 傷病手当金の支給額は、休業1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額となります。(←この部分は正しい記述) 傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月である。(←この部分が誤った記述) |
問3
解答:①733,721円 ②1,217,895円
①について
国民年金の未加入期間29月については、保険料納付済月数には含めません。
ですので、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額は、
「780,900円×(480月-29月)÷480月=733,720.625円→733,721円(円未満四捨五入)」となります。
②について
ア)報酬比例部分について
- 2003年3月以前の期間分
250,000円× 7.125÷1,000×240月=427,500円 - 2003年4月以後の期間分
500,000円× 5.481÷1,000×271月=742,675.5円 - 報酬比例部分の金額は、上記を合算した金額「427,500円+742,675.5円=1,170,175.5円→1,170,176円(円未満四捨五入)」となります。
イ)経過的加算について
1,628円×480月(上限)-780,900円× 451月÷480月=47,719.375円→47,719円(円未満四捨五入)
ウ)加給年金について
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級・2級の障害がある場合は、20歳未満の子)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
本問は、Aさんが65歳になった時点では、既に、妻Bさんが65歳になっていますので、上記の要件を満たさず、支給されないことになります。
↓
上記の結果、
Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額は、
「1,170,176円+47,719円=1,217,895円」となります。