2023年9月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
第1問:FP2級生保顧客(2023年9月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(48歳)は、会社員の妻Bさん(49歳)および大学生の長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、今後の資金計画を検討するなかで、老後の生活資金等について、そろそろ準備をしておきたいと考えるようになった。 <Aさんとその家族に関する資料> (1)Aさん(1975年8月10日生まれ・48歳・会社員)
(2)妻Bさん(1974年6月23日生まれ・49歳・会社員)
(3)長女Cさん(2003年12月9日生まれ・19歳・大学生)
※妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、A さんと生計維持関係にあるものとする。 |
問1
Aさんが、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2023年度価額)を計算した次の<計算の手順>の空欄①~④に入る最も適切な数値を答えなさい。計算にあたっては、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>および下記の<資料>に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入) ( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1)報酬比例部分の額(円未満四捨五入) ( ② )円
(2)経過的加算額(円未満四捨五入) ( ③ )円
(3)基本年金額(上記「(1)+(2)」の額) □□□円
(4)加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5)老齢厚生年金の年金額 ( ④ )円
問2
Mさんは、Aさんに対して、老後の年金収入を増やす方法として確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選びなさい。
- 「Aさんおよび妻Bさんは、最長で(①)歳まで個人型年金に加入し、掛金を拠出することができます。拠出することができる掛金の限度額は、Aさんの場合は年額144,000円、妻Bさんの場合は年額(②)円です」
- 「個人型年金を利用するメリットの1つとして、税制の優遇措置が挙げられます。拠出する掛金は(③)として所得控除の対象となります。また、老齢給付金を年金で受け取った場合、当該給付金は雑所得として総合課税の対象となり、老齢基礎年金や老齢厚生年金と同様に公的年金等控除の対象となります。なお、個人型年金は、Aさんの指図に基づく運用実績により、将来の年金受取額が増減する点に留意する必要があります」
<語句群> イ.60 ロ.65 ハ.70 ニ.240,000 ホ.276,000 ヘ.816,000 ト.社会保険料控除 チ.小規模企業共済等掛金控除 リ.生命保険料控除 |
問3
Mさんは、Aさんに対して、各種のアドバイスをした。Mさんがアドバイスした次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「確定拠出年金の個人型年金は、Aさん自身の都合で任意に脱退することができます。脱退した場合に受け取る脱退一時金は、一時所得として総合課税の対象となります」
- 「Aさんが60歳から確定拠出年金の個人型年金の老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が10年以上なければなりません。Aさんの通算加入者等期間が10年以上である場合、老齢給付金の受給開始時期を、60歳から75歳になるまでの間で選択することができます」
- 「長女Cさんは、2023年12月から国民年金の保険料を納付する必要がありますが、Aさんおよび妻Bさんの前年所得がいずれも一定額以下であれば、長女Cさんは国民年金の学生納付特例制度を利用することができます」
解答・解説
問1
①について
60歳までの厚生年金保険の被保険者期間も保険料納付済月数に含まれます。
ですので、老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入) は、「795,000円×480/480=795,000円」となります。
②について
報酬比例部分の額は、「(28万円×7.125/1,000×60月)+(45万円×5.481/1,000×448月)=1,224,669.6円→1,224,670円(円未満四捨五入)」となります。
③について
経過的加算額は、「1,657円×480月(上限)-795,000円×448月/480月=53,360円」となります。
④について
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級・2級の障害がある場合は、20歳未満の子)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
↓
本問は、妻Bさんが年上ですので、加給年金額は、加算されません。
↓
ですので、老齢厚生年金の年金額は、「1,224,670円+53,360円=1,278,030円」となります。
解答:①795,000 ②1,224,670 ③ 53,360 ④1,278,030
問2
①について
国民年金の任意加入被保険者・厚生年金の被保険者(Aさん及び妻Bさん)は、65歳になるまで加入することができます。ただし、公的年金を65歳前に繰り上げ請求された者は、加入することができません。
②について
「妻Bさんの勤務先は、確定拠出年金の企業型年金及び他の企業年金を実施していない」となっていますので、掛金の拠出限度額は、月額23,000円(年額276,000円)です。
③について
個人型年金の掛金は、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。
解答:①ロ ②ホ ③チ
問3
- ×
確定拠出年金の個人型年金は、Aさん自身の都合で任意に脱退することができません。
※「通算拠出期間が5年以内又は個人別管理資産が25万円以下であること」等の要件を満たせば、脱退一時金が支給されます。
※脱退一時金は、一時所得となります。 - 〇
Aさんが60歳から確定拠出年金の個人型年金の老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が10年以上なければなりません。Aさんの通算加入者等期間が10年以上である場合、老齢給付金の受給開始時期を、60歳から75歳になるまでの間で選択することができます。(75歳までに受給を開始する必要がある!) - ×
第1号被保険者で一定の大学等の学生である者は、本人(長女Cさん)の所得金額が一定金額以下であれば、申請により、在学中の保険料の納付が猶予されます。
解答:①× ②〇 ③×