2024年5月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
第1問:FP2級生保顧客(2024年5月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 Aさん(41歳)は、妻Bさん(39歳)との2人暮らしである。Aさんは、X株式会社を2021年7月末日に退職し、個人事業主として独立した。独立から3年近くが経過した現在、事業は軌道に乗り、収入は安定している。 (1)Aさん(41歳、個人事業主)
(2)妻Bさん(39歳、会社員)
※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
問1
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を答えなさい。年金額の計算にあたっては、《設例》の〈Aさんとその家族に関する資料〉および下記の〈資料〉に基づくこと。なお、年金額は2023年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。
- 「Aさんが65歳に達すると、老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は、( ① )円となります」
- 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額は、( ② )円となります。なお、Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は( ③ )年以上ありませんので、老齢厚生年金の額に配偶者に係る加給年金額の加算はありません」
問2
Mさんは、Aさんに対して、小規模企業共済制度について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選びなさい。
「小規模企業共済制度は、Aさんのような個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための共済制度です。毎月の掛金は、1,000円から( ① )円までの範囲内で、500円単位で選択することができます。支払った掛金は、税法上、( ② )の対象となります。
共済金は、加入者に廃業等の事由が生じた場合に、掛金納付月数等に応じて支払われます。共済金の受取方法には、『一括受取り』『分割受取り』『一括受取りと分割受取りの併用』があります。『一括受取り』の共済金(死亡事由以外)は、税法上、( ③ )として課税対象となります。
なお、掛金納付月数が240カ月未満で任意解約した場合は、解約手当金の額が掛金合計額を下回りますので、早期の解約はお勧めできません」
<語句群> イ.55,000 ロ.70,000 ハ.88,000 ニ.事業所得の必要経費 ホ.所得控除 ヘ.税額控除 ト.事業所得 チ.一時所得 リ.退職所得 |
問3
Mさんは、Aさんに対して、老後の収入を増やすことができる各種制度について説明した。Mさんが説明した次の記述1~4について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんは、国民年金の定額保険料に上乗せして、付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を200月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の額に付加年金として年額80,000円が上乗せされます」
- 「国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は2種類の終身年金(A型・B型)のいずれかを選択します」
- 「国民年金基金の1口目の給付には、国民年金の付加年金相当が含まれているため、Aさんが国民年金基金に加入した場合、国民年金の付加保険料を納付することはできません」
- 「国民年金の定額保険料や付加保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引がありますが、国民年金基金の掛金については、前納による割引制度はありません」
解答・解説
問1
①について
学生納付特例制度による猶予期間(31月)は、その期間に係る保険料の追納がない場合、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、老齢基礎年金の年金額には反映されません。
ですので、老齢基礎年金の額は、「795,000円×(196月+253月)÷480月=743,656.25円→743,656円(円未満四捨五入)」となります。
②・③について
報酬比例部分の額は、「(30万円×5.481/1,000×196月)=322,282.8円→322,283円(円未満四捨五入)」となります。
経過的加算額は、「1,657円×196月-795,000円×196月/480月=147円」となります。
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級・2級の障害がある場合は、20歳未満の子)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
本問は、Aの厚生年金保険の被保険者期間は20年以上ありませんので、老齢厚生年金の額に配偶者に係る加給年金額の加算はありません。
↓
上記の結果、老齢厚生年金の年金額は、「322,283円+147円=322,430円」となります。
解答:①743,656 ②322,430 ③20
問2
①について
小規模企業共済の掛金月額は、1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
②について
加入者が支払った小規模企業共済の掛金は、その全額が所得税・住民税における小規模企業共済等掛金控除(所得控除)の対象となる。
③について
一括受取りの共済金(死亡事由以外)は、税法上、退職所得として課税対象となります。
※分割で受け取った共済金は、公的年金等の雑所得として課税対象となります。
解答:①ロ ②ホ ③リ
問3
- ×
仮に、Aさんが付加保険料を200月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の額に付加年金として年額「200円×200月=40,000円」が上乗せされます。 - 〇
国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は2種類の終身年金(A型・B型)のいずれかを選択します。 - 〇
国民年金基金の1口目の給付には、国民年金の付加年金相当が含まれているため、Aさんが国民年金基金に加入した場合、国民年金の付加保険料を納付することはできません。 - ×
国民年金基金の掛金についても、前納による割引制度があります。(1年分の掛金を前納すると掛金が割引される)