2021年1月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第3問の問題と解説です。
第3問:FP2級個人資産(2021年1月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問7~問9)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務する会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、2020年10月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けた。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して、引き続き、X社に勤務している。なお、金額の前の「▲」は赤字であることを表している。 <Aさんとその家族に関する資料>
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料> (1)給与収入の金額:750万円 (2)不動産所得の金額:▲150万円
(3)一時払変額個人年金保険(確定年金)の解約返戻金
(4)X社から支給を受けた退職金の額:2,200万円
※妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
問7
AさんがX社から受け取った退職金に係る退職所得の金額を計算した下記の計算式の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、Aさんは、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
<退職所得控除額>
800万円+( ① )万円×(□□□年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(2,200万円-( ② )万円)×□□□=( ③ )万円
問8
Aさんの2020年分の所得金額について、次の①、②を求めなさい。〈答〉は万円単位とすること。
①総所得金額に算入される一時所得の金額
②総所得金額
問9
Aさんの2020年分の所得税の課税に関する次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「妻Bさんの合計所得金額は48万円以下であるため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます」
- 「Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の控除額は、38万円です」
- 「Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の控除額は、48万円です」
解答・解説
問7
①と②について
勤続年数20年超の者が受け取る退職手当等に係る退職所得の金額の計算上、退職手当等の収入金額から控除する退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。なお、退職所得控除額における勤続年数を計算する際、その計算した期間に1年未満の端数が生じたときは、これを1年として勤続年数を計算することになります。
ですので、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円」となります。
③について
退職所得の金額(特定役員退職手当等に係るものを除く)は、「(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2」の算式により計算されることになります。
ですので、退職所得の金額は、「(2,200万円-1,850万円)×1/2=175万円」となります。
解答:①70 ②1,850 ③175
問8
①について
一時所得の金額は、「一時所得に係る総収入金額-その収入を得るために支出した金額の合計額-50万円(特別控除」の算式により計算されます。
そして、
総所得金額に算入される一時所得の金額は、「上記の一時所得の金額×1/2」の算式により計算されます。
ですので、
総所得金額に算入される一時所得の金額は、「800万円-500万円-50万円=250万円×1/2=125万円」となります。
②について
- 給与所得:750万円-185万円(※)=565万円
※750万円×10%+110万円=185万円 - 一時所得:125万円(上記①を参照)
- 不動産所得の損失については、損益通算の対象となりますが、土地等の取得に係る負債の利子10万円については、損益通算の対象とはなりません。
ですので、
総所得金額は、「565万円+125万円-(150万円-10万円)=550万円」となります。
解答:①125万円 ②550万円
問9
- 〇
妻Bさんの合計所得金額は48万円以下であるため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。 - 〇
Aさんが適用を受けることができる長女Cさん(一般の控除対象扶養親族)に係る扶養控除の控除額は、38万円です。 - ×
母Dさんは、70歳以上で、かつ、同居等していますので、扶養控除の控除額は、58万円です」