2021年5月FP2級個人資産:第5問(実技試験)

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2021年5月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第5問の問題と解説です。

第5問:FP2級個人資産(2021年5月実技試験)

次の設例に基づいて、下記の各問(問13~問15)に答えなさい。

《設例》

非上場会社である株式会社X社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)は、自宅で妻Bさん(70歳)および長男Cさん(45歳)家族と同居している。Aさんは、妻Bさんに自宅および相応の現預金等を相続させ、X社の専務取締役である長男CさんにAさんが100%所有するX社株式およびX社本社敷地・建物を承継する予定である。
長女Dさん(42歳)は、会社員の夫、2人の子(孫Eさん14歳・孫Fさん12歳)と分譲マンション(夫所有)に住んでいる。長女Dさんからは「子どもの教育資金や住宅ローンの返済で家計に余裕がない。資金を援助してほしい」と頼まれている。Aさんは、この機会に、長女Dさんに対して生前贈与を実行しようと考えている。

(注)「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額

※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問13

生前贈与に関する以下の文章の空欄(1)~(3)に入る最も適切な数値を答えなさい。

  1. 「Aさんが生前贈与を実行するにあたっては、暦年課税制度による贈与、相続時精算課税制度による贈与などが考えられます。仮に、長女Dさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2021年中にAさんから現金600万円の贈与を受けた場合、贈与税額は( 1 )万円となります」
  2. 「Aさんからの贈与について、長女Dさんが暦年課税制度による贈与ではなく、相続時精算課税制度を選択した場合、累計で( 2 )万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます。長女Dさんが相続時精算課税制度を選択した場合、その後に行われるAさんからの贈与について、暦年課税を選択することはできません」
  3. 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受ける場合、受贈者1人につき1,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については( 3 )万円が限度となります」

問14

現時点(2021年5月23日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は6億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

問15

Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。

  1. 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が始まっています。この制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は必要ありません」
  2. 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を6億円とした場合、長女Dさんの遺留分の額は1億5,000万円となります」
  3. 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額6,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,200万円とすることができます」

解答・解説

問13

(1)について

贈与を受けた年の1月1日において20歳以上(←2022年4月改正予定)の者(子や孫など)が、直系尊属(祖父母や父母など、年齢は何歳でも良い)から財産の贈与を受け、暦年課税の適用を受けた場合の贈与税額は、特例税率(特例贈与財産に適用される税率)を適用して計算します。

ですので、贈与税額は、「600万円-110万円=490万円×20%-30万円=68万円」となります。

(2)について

長女Dさんが暦年課税制度による贈与ではなく、相続時精算課税制度を選択した場合、累計で2,500万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます。

(3)について

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受ける場合、受贈者1人につき1,500万円までは贈与税が非課税となります。

ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については500万円が限度となります。

解答:(1)68万円(2)2,500万円(3)500万円

問14

①について

基礎控除額は、「3,000万円+600万円×3人(法定相続人の数・Bさん、Cさん、Dさん)=4,800万円」となります。

②について

課税遺産総額は、「6億円-4,800万円=5億5,200万円」となります。

  • Bさんの相続税:5億5,200万円×2分の1=2億7,600万円×45%-2,700万円=9,720万円
  • Cさんの相続税:5億5,200万円×4分の1=1億3,800万円×40%-1,700万円=3,820万円
  • Dさんの相続税:Cさんと同様、3,820万円

③について

相続税の総額は、「9,720万円+3,820万円+3,820万円=1億7,360万円」となります。

解答:①4,800万円 ②9,720万円 ③1億7,360万円

問15

1

法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が始まっています。

なお、この制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は必要ありません。

2×

「相続人が直系尊属のみ」以外の場合の各相続人の遺留分は、遺留分算定基礎財産の価額の2分の1相当額に法定相続分を乗じた額となります。

ですので、長女Dさんの遺留分の額は「6億円×2分の1×4分の1=7,500万円」となります。

3×

特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等について本特例の適用を受ける場合は、400㎡を限度として80%相当額が減額できます。

ですので、相続税の課税価格に算入すべき価額を「6,000万円-6,000万円×400㎡÷600㎡×80%=2,800万円」とすることができます。

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