2022年1月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第3問の問題と解説です。
第3問:FP2級個人資産(2022年1月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問7~問9)に答えなさい。
《設例》 大学卒業後、X株式会社(以下、「X社」という)に勤務した会社員のAさんは、現在、妻Bさんおよび長女Cさんとの3人家族である。Aさんは、2021年11月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けた。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して、引き続きX社に勤務している。なお、金額の前の「▲」は赤字であることを表している。 <Aさんとその家族に関する資料>
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料> (1)給与収入の金額:900万円 (2)不動産所得の金額:▲100万円 損失の金額100万円のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子10万円を含む。 (3)一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金
(4)X社から支給を受けた退職金の額:2,700万円
※妻Bさんおよび長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
問7
AさんがX社から受け取った退職金に係る退職所得の金額を計算した下記の計算式の空欄①~③に入る最も適切な数値を答えなさい。なお、Aさんは、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
<退職所得控除額>
( ① )万円+□□□万円×(□□□年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(2,700万円-( ② )万円)×□□□=( ③ )万円
問8
Aさんの2021年分の所得金額について、次の①、②を求めなさい。なお、総所得金額の計算上、Aさんが所得金額調整控除の適用対象者に該当している場合、所得金額調整控除額を控除すること。また、〈答〉は万円単位とすること。
①総所得金額に算入される一時所得の金額
②総所得金額
問9
Aさんの2021年分の所得税における所得控除に関する次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが適用を受けることができる基礎控除の額は、38万円です」
- 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、48万円です」
- 「Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の額は、63万円です」
解答・解説
問7
退職所得の金額(特定役員退職手当等に係るものを除く)は、「(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×2分の1」となります(2022年以後から改正されます)。
そして、勤続年数20年超の者の場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。なお、勤続年数を計算する際、その計算した期間に1年未満の端数が生じたときは、これを1年として勤続年数を計算します。
↓
ですので、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(37-20年)=1,990万円」となり、退職所得の金額は、「(2,700万円-1,990万円)×2分の1=355万円」となります。
解答:①800 ②1,990 ③355
問8
➀について
一時所得の金額は、「600万円-500万円-50万円=50万円」となり、総所得金額に算入される一時所得の金額は、「50万円×2分の1=25万円」となります。
②について
その年の給与等の収入金額が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合、総所得金額の計算上、給与等の収入金額(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額(本問は5万円)を給与所得の金額から控除することができます。(本問はこの要件に該当します)
ですので、給与所得の金額は、「900万円-195万円(給与所得控除額)=705万円-5万円(所得金額調整控除額)=700万円」となります。
↓
不動産所得の損失の金額100万円のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子10万円については、損益通算の対象とはなりません。
↓
総所得金額は、「25万円+700万円-90万円=635万円」となります。
解答:①25 ②635
問9
1 | × | 納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下の場合の基礎控除の金額は、48万円となります。 |
2 | × | 合計所得金額が900万円以下である納税者が配偶者控除の適用を受ける場合、控除対象配偶者のその年12月31日現在の年齢が70歳未満であるときは、控除額は38万円となります。 |
3 | 〇 | 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の者をいい、扶養控除額は、63万円となります。 |