2019年9月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
目次
第1問:FP2級生保顧客(2019年9月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 Aさん(48歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)を2019年10月末日に退職し、個人事業主として独立する予定である。Aさんは、X社を退職するにあたって、公的年金制度の取扱いや60歳以後の支給額について知りたいと思っている。 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。 <Aさんとその家族に関する資料> (1) Aさん(48歳)
(2) 妻Bさん(47歳)
(3) 長女Cさん(15歳)
※妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 ※家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 ※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
問1:老齢基礎年金及び老齢厚生年金
はじめに、Mさんは、Aさんに対して、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>および下記の<資料>に基づき、次の(1)、(2)を求めなさい。なお、年金額は2019年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。
(1)原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額
(2)原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額
<資料>
問2:退職後の公的年金制度
次に、Mさんは、Aさんに対して、X社退職後におけるAさん夫妻の公的年金制度の取扱いについて説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんは国民年金の第2号被保険者から第1号被保険者へ、妻Bさんは国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更の届出を行う必要があります」
- 「Aさんの退職に伴い、Aさんおよび妻Bさんは、国民年金の保険料を納付することになります。2019年度の国民年金の保険料は、月額13,580円となります」
- 「国民年金の毎月の保険料は翌月末日までに納付しなければなりませんが、将来の一定期間の保険料を前納することもできます。前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引があり、前納できる期間は1年が上限となります」
問3:年金収入を増やす制度
最後に、Mさんは、Aさんに対して、X社退職後、老後の年金収入を増やすことができる各種制度について説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「老後の年金収入を増やすために、国民年金の付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を120月納付し、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、老齢基礎年金の額に付加年金として48,000円が上乗せされます」
- 「老後の年金収入を増やすために、国民年金基金に加入することができます。ただし、60歳から給付を受けるためには、通算加入者等期間が10年以上なければならないため、50歳までに加入する必要があります」
- 「老後の年金収入を増やすために、確定拠出年金の個人型年金に加入することができます。Aさんが拠出することができる掛金の限度額は、年額81万6,000円(月額68,000円)となり、拠出した掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となります」
解答・解説
問1:老齢基礎年金及び老齢厚生年金
(1)について
未納期間35月は、保険料納付済月数に含みません。
ですので、老齢基礎年金の年金額は、「780,100円×445月÷480月=723,217.7…円→723,218円(円未満四捨五入)」となります。
※2020年9月の試験からは、「780,100円」ではなく、「781,700円」となります。
(2)について
- 報酬比例部分
a)28万円×7.125÷1,000×108月=215,460円
b)42万円×5.481÷1,000×199月=458,101.98円
合計:a)+b)=673,561.98円→673,562円(円未満四捨五入) - 経過的加算額
1,626円×307月(108月+199月)-780,100円×307月÷480月=243.0…円→243円(円未満四捨五入)
※2020年9月の試験からは、「1,626円」ではなく、「1,630円」となります。また、「780,100円」ではなく、「781,700円」となります。 - 加給年金額
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点等で、生計を維持している65歳未満の配偶者等や18歳到達年度末までの子ども(1級もしくは2級の障害がある場合には、20歳未満の子ども)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
Aさんが65歳になった時点で、妻Bさんは、65歳未満ですので、加給年金額が加算れます。
※問題文上、加給年金額が390,100円となっていますが、2020年9月の試験からは390,900円となります。
上記の結果、
老齢厚生年金の年金額は、「673,562円+243円+390,100円=1,063,905円」となります。
解答:(1)723,218円(2)1,063,905円
問2:公的年金制度
1. | 〇 | 会社を退職したときAさんは、「国民年金の第2号被保険者→国民年金の第1号被保険者」へ変更!ということになります。 これに伴い、妻Bさんは、「国民年金の第3号被保険者→国民年金の第1号被保険者」へ変更!ということになります。 |
2. | × | 2019年度の国民年金の保険料は、月額16,410円です。 ※2020年度の国民年金の保険料は、月額16,540円となります。 |
3. | × | 前納できる期間は2年が上限となります。 なお、前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引があります。 |
問3:年金収入を増やす制度
1. | × | 付加年金額は、「200円×120月(付加保険料納付月数)=24,000円」となります。 |
2. | × | 確定拠出年金の場合であれば、通算加入者等期間が10年以上でなければ、60歳から受給することができません。 しかし、国民年金基金の場合には、このような定めはありません。 国民年金基金は、1ヵ月でも加入すれば、年金を受け取ることができます。 国民年金基金の老齢年金は、確定年金(I型・II 型)の場合、65歳から支給が開始され、確定年金(Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型)の場合、60歳から支給が開始されます。 |
3. | 〇 | 個人型年金(iDeCo)の加入者が国民年金の第1号被保険者である場合、掛金の拠出限度額は、年額81万6,000円(月額68,000円)となります。 そして、拠出した掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となります。 |