2019年5月に実施されましたFP3級実技試験(個人資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
目次
第1問:2019年5月FP3級実技試験(個人資産)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(58歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後から現在に至るまでX社に勤務しており、会社の同僚であった妻Bさんと結婚した。Aさんは、2019年9月に定年を迎える予定であるが、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで厚生年金保険の被保険者として勤務する予定である。 Aさんは、老後の生活設計を考えるために、60歳以後もX社に継続勤務した場合の公的年金の仕組みについて、理解を深めたいと思っている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。 <Aさん夫妻に関する資料> (1)Aさん(1959年9月13日生まれ)
(2)妻Bさん(1961年4月9日生まれ・専業主婦) ・公的年金加入歴:18歳からAさんと結婚するまでの12年間(144月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。 ※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 ※Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 ※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
問1:老齢給付
はじめに、Mさんは、Aさんが65歳までに受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄(1)~(3)に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「老齢厚生年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、経過的措置として、老齢基礎年金の受給資格期間( 1 )年を満たし、かつ、厚生年金保険の被保険者期間が( 2 )年以上あることなどの所定の要件を満たしている方は、65歳到達前に特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。1959年9月生まれのAさんは、原則として、( 3 )歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます」 |
- (1)25 (2)10 (3)60
- (1)10 (2)10 (3)62
- (1)10 (2)1 (3)64
問2:老齢基礎年金
次に、Mさんは、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額(2018年度価額)の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
- 779,300円×449月÷480月
- 779,300円×509月÷480月
- 779,300円×(449月+31月×2分の1)÷480月
問3:老齢厚生年金
最後に、Mさんは、老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
- 「Aさんが受給する特別支給の老齢厚生年金は、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が28万円(2018年度の支給停止調整開始額)を超えると、年金額の一部または全部が支給停止となります」
- 「Aさんが65歳に達すると、特別支給の老齢厚生年金の受給権は消滅し、新たに老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」
- 「妻Bさんは厚生年金保険の被保険者期間が10年以上ありますので、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額の加算はありません」
解答・解説
問1:老齢給付
(1)と(2)について
特別支給の老齢厚生年金が支給されるためには、老齢基礎年金の受給資格期間10年を満たし、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あることなどの要件を満たす必要があります。
(3)について
昭和34年(1959年)4月2日~昭和36年4月1日に生まれた男性の方は、原則として、64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます
解答:3
問2:老齢基礎年金
20歳から60歳までの保険料納付済月数は、「480月-31月(未加入期間)=449月」となります。
ですので、老齢基礎年金の年金額の計算式は、「779,300円×449月÷480月」となります。
※2020年9月の試験からは、「779,300円(2020年5月の試験では780,100円」ではなく「781,700円」となります。
解答:1
問3:老齢厚生年金
- 適切
Aさんが受給する特別支給の老齢厚生年金は、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が28万円(2018年度の支給停止調整開始額)を超えると、年金額の一部または全部が支給停止となります。(60歳以上65歳未満の場合の在職老齢年金の話) - 適切
Aさんが65歳に達すると、特別支給の老齢厚生年金の受給権は消滅し、新たに老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます。 - 不適切
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級もしくは2級の障害がある場合には、20歳未満の子ども)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
なお、配偶者が被保険者期間が20年以上の老齢厚生年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。
解答:3