2019年5月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
目次
第1問:FP2級生保顧客(2019年5月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(47歳)は、高校を卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、子が来年3月に大学を卒業する予定であり、教育費のめどがついたため、老後の生活資金の準備を始めたいと考えている。その前提として、将来どのくらいの年金額を受給することができるのか、公的年金制度について知りたいと思うようになった。また、Aさんは、老後の生活資金の準備として確定拠出年金の個人型年金に興味を持っている。 <Aさん夫妻に関する資料> (1) Aさん(1971年7月12日生まれ・47歳・会社員)
(2) 妻Bさん(1972年9月22日生まれ・46歳・パート従業員)
※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 ※Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 ※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
問1:老齢給付の額
はじめに、Mさんは、Aさんに対して、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付の額について説明した。《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>および下記の<資料>に基づき、次の(1)、(2)を求めなさい。なお、年金額は2018年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。
(1)原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額
(2)原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額
問2:老齢基礎年金
次に、Mさんは、Aさんに対して、老齢基礎年金について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄(1)~(3)に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のイ~チのなかから選びなさい。
「老齢基礎年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、Aさんが希望すれば、60歳以上65歳未満の間に老齢基礎年金の繰上げ支給を請求することができます。ただし、繰り上げた月数に応じて年金額は減額されます。Aさんが60歳0カ月で老齢基礎年金の繰上げ支給を請求した場合、年金の減額率は( 1 )%となります。なお、Aさんが老齢基礎年金の繰上げ支給を請求する場合、その請求と同時に老齢厚生年金の繰上げ支給の請求を( 2 )。
また、老齢基礎年金の支給開始を繰り下げることもできます。支給開始を繰り下げた場合は、繰り下げた月数に応じて年金額が増額されます。Aさんが70歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は( 3 )%となります」
<語句群> イ.2.5 ロ.3.5 ハ.30 ニ.36 ホ.42 ヘ.48 ト.しなければなりません チ.するかどうか選択できます |
問3:個人型年金
最後に、Mさんは、Aさんに対して、確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)について説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが個人型年金に加入した場合、拠出できる掛金の限度額は、年額14万4,000円となります。ただし、個人型年金に加入後、原則として、掛金の拠出額を途中で変更(減額)することや掛金の拠出を停止することはできません」
- 「個人型年金に加入するメリットとして、税制の優遇措置が挙げられます。加入者が拠出する掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります」
- 「個人型年金に加入するにあたっての留意点として、加入時や運用期間中に各種の手数料がかかること、年金資産の運用リスクは加入者が負うことなどが挙げられます」
解答・解説
問1:老齢給付の額
(1)について
老齢基礎年金の年金額は、「779,300円×480月(20歳から60歳までの保険料納付済月数)÷480月=779,300円」となります。
※2020年9月の試験からは、「779,300円(2020年5月の試験では780,100円)」ではなく、「781,700円」となります。
(2)について
- 報酬比例部分
a)2003年3月以前:28万円×7.125÷1,000×156月=311,220
b)2003年4月以後:42万円×5.481÷1,000×339月=780,384.78
合計:a)+b)=1,091,604.78→1,091,605円(円未満四捨五入) - 経過的加算
1,625円×480月(上限)-779,300円×480月÷480月=700円
※2020年9月の試験からは、「1625円(2020年5月の試験では1,626円)」ではなく、「1,630円」となります。また、「779,300円」ではなく、「781,700円」となります。 - 加給年金
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級もしくは2級の障害がある場合には、20歳未満の子ども)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算される。
Aさんが65歳になったときに、妻Bさんが65歳未満ですので、加給年金が支給されます。 - 老齢厚生年金の年金額は、「1,091,605円+700円+389,800円=1,482,105円」となります。
※2020年9月の試験から、加給年金額は、「389,800円(2020年5月の試験では、390,100円)」ではなく、「390,900円」となります。
解答:(1)779,300(2)1,482,105
問2:老齢基礎年金
(1)について
Aさんが60歳0カ月で老齢基礎年金の繰上げ支給を請求した場合、年金の減額率は「0.5%×60月=30%」となります。
(2)について
Aさんが老齢基礎年金の繰上げ支給を請求する場合、その請求と同時に老齢厚生年金の繰上げ支給の請求をしなければなりません。(繰下げとは異なる!)
(3)について
Aさんが70歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は「0.7%×60月=42%」となります。
解答:(1)ハ(2)ト(3)ホ
問3:個人型年金
1. | × | 「X社が実施している確定給付企業年金の加入者である。」と記載されていますので、国民年金の第2号被保険者であるAさんの掛金限度額は、年額144,000円です。(←ここは正しい記述) 個人型年金に加入後、原則として、掛金の拠出額を途中で変更(減額)することや掛金の拠出を停止することができます。(←ここが誤った記述) |
2. | 〇 | 加入者が拠出する掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。(加入者本人の所得控除) |
3. | 〇 | 加入時や運用期間中に各種の手数料がかかり、年金資産の運用リスクは加入者が負うことになります。 |