2018年9月FP2級個人資産:第1問(実技試験)

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2018年9月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第1問の問題と解説です。

第1問:FP2級個人資産(2018年9月実技試験)

次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。

《設例》

X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、平成31年2月に満60歳となり定年を迎える。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、以後、現在に至るまで同社に勤務している。X社には、本人が希望すれば65歳になるまで勤務することができる継続雇用制度がある。Aさんは、継続雇用制度を利用せず、60歳以後は仕事をしない予定としているが、X社の社長からは「人材の確保が難しく、Aさんに辞められては困る。しばらくは継続して働いてもらえないだろうか」と言われている。Aさんは、継続雇用制度を利用した場合と利用しなかった場合で、公的年金等の社会保険の取扱いにどのような違いがあるか、確認しておきたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさん夫婦に関する資料等は、以下のとおりである。

<X社の継続雇用制度の雇用条件>

・1年契約の嘱託雇用で1日8時間(週40時間)勤務

・賃金月額は60歳到達時の65%(月額29万円)で賞与はなし

<Aさん夫婦に関する資料>

(1)Aさん(昭和34年2月16日生まれ・会社員)

・公的年金加入歴: 下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む)

・全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

(2) 妻Bさん(昭和37年6月17日生まれ・専業主婦)

・公的年金加入歴: 18歳からAさんと結婚するまでの8年間(96月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。

・Aさんが加入する全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。

※Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。

※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問1:老齢給付

Mさんは、Aさんに対して、Aさんが65歳になるまでに受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄(1)~(3)に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のイ~リのなかから選びなさい。

  1. 「 昭和34年2月生まれのAさんは、原則として、(1)歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。Aさんが60歳以後も厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務した場合は、(1)歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に年金額が計算されます。なお、(1)歳からAさんに支給される報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金には、配偶者の加給年金額(2)」
  2. 「Aさんが(1)歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が(3)万円を超える場合は、特別支給の老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となります」

〈語句群〉

イ.25 ロ.28 ハ.46 ニ.48 ホ.62

ヘ.63 ト.64 チ.が加算されます リ.は加算されません

問2:社会保険

Mさんは、Aさんに対して、社会保険に係る各種の取扱いについて説明した。Mさんが説明した次の記述(1)~(3)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。

(1)「Aさんが60歳以後もX社に勤務し、かつ、60歳以後の各月(支給対象月)に支払われる賃金額が60歳到達時の賃金月額の75%相当額を下回った場合は、所定の手続を行うことにより、支給対象月に支払われた賃金額の15%に相当する額の高年齢雇用継続基本給付金が支給されます」

(2)「Aさんが定年退職によって、厚生年金保険の被保険者でなくなった場合、妻Bさんは、60歳になるまでの間、国民年金の第1号被保険者として国民年金の保険料を納付する必要があります。なお、国民年金の保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引があります」

(3)「Aさんが継続雇用制度を利用せず、X社を定年退職した場合であっても、Aさんは、所定の手続を行うことにより、最長で2年間、全国健康保険協会管掌健康保険に任意継続被保険者として加入することができます。なお、任意継続被保険者の保険料は、Aさんが全額負担することになります」

問3:老齢基礎年金及び老齢厚生年金

Aさんが、60歳でX社を定年退職し、その後再就職および継続雇用制度を利用しない場合、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(平成30年度価額)を計算した次の〈計算の手順〉の空欄(1)~(4)に入る最も適切な数値を求めなさい。計算にあたっては、《設例》の<Aさん夫婦に関する資料>および下記の<資料>に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

〈計算の手順〉

1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入) ( 1 )円

2.老齢厚生年金の年金額

【1】報酬比例部分の額(円未満四捨五入) ( 2 )円

【2】経過的加算額(円未満四捨五入) ( 3 )円

【3】基本年金額(上記「【1】+【2】」の額) □□□円

【4】加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)

【5】老齢厚生年金の年金額 ( 4 )円

<資料>

・老齢基礎年金の計算式(4分の1免除月数、4分の3免除月数は省略) 780,100円×{(保険料納付済月数+保険料半額免除月数×○/□+保険料全額免除月数×△/□)/480}

・老齢厚生年金の計算式(本来水準の額)

ⅰ)報酬比例部分の額(円未満四捨五入)=a+b

a:平成15年3月以前の期間分 平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月以前の被保険者期間の月数

b:平成15年4月以後の期間分 平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数

ⅱ)経過的加算額(円未満四捨五入)=1,626円×被保険者期間の月数-780,100円×(昭和36年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/480)

ⅲ)加給年金額=390,000円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

解答・解説

問1:老齢給付

昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までの間に生まれた男性の場合、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分のみ)の支給開始年齢は、原則63歳です。

ですので、昭和34年2月生まれのAさんは、原則として、63歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。

加給年金額は、所定の要件を満たせば、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢到達時又は65歳以降の老齢厚生年金の受給権を取得したときから加算されます。

Aさんは、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができますので、加給年金額は加算されません。

厚生年金保険の被保険者に支給される特別支給の老齢厚生年金は、その受給権者の総報酬月額相当額と基本月額との合計額が28万円を超える場合、年金額の全部または一部が支給停止となります。

解答:(1)ヘ. (2)リ. (3)ロ.

問2:社会保険

(1)解答:×

高年齢雇用継続給付の支給額は、賃金の低下率によって異なります。

なお、賃金の低下率が61%以下の場合、支給対象月に支払われた賃金額の15%(上限)に相当する額の高年齢雇用継続基本給付金が支給されることになります。

 (2)解答:〇

Aさんが定年退職によって、厚生年金保険の被保険者でなくなった場合、妻Bさんは、第3号被保険者としての資格を喪失することになります。 ですので、妻Bさんは、60歳になるまでの間、国民年金の第1号被保険者として国民年金の保険料を納付する必要があります。なお、国民年金の保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引があります。

(3)解答:〇

「資格喪失日の前日までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること」「資格喪失日から20日以内に申請すること」、これらが、任意継続被保険者となるための要件です。

ですので、Aさんは、任意継続被保険者になることができます。

任意継続被保険者として加入できる期間は、最長2年間です。

任意継続被保険者の保険料は、Aさんが全額負担することになります。

問3:老齢基礎年金及び老齢厚生年金

(1)について

780,100円×(保険料納付済月数+免除月数×一定割合)÷480ヵ月=老齢基礎年金の額

未加入期間26月分については、上記算式の保険料納付済月数に含みません。

ですので、780,100円×454月(264月+190月)÷480月=737,844.5…円→737,845円(四捨五入)が老齢基礎年金の額となります。

※2020年9月の試験から、「780,100円」ではなく、「781,700円」となります。下記(3)も同じです。

(2)について

報酬比例部分(1,084,995円)=a(564,300円)+b(520,695円)

a:平成15年3月以前の期間分

平均標準報酬月額(30万円)×7.125/1,000×平成15年3月以前の被保険者期間の月数(264月)=564,300円

b:平成15年4月以後の期間分

平均標準報酬額(50万円)×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数(190月)=520,695円

(3)について

1,626円×被保険者期間の月数(454月)-780,100円×昭和36年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数(454月)÷480月=359.4…円→359円(四捨五入)が、経過的加算額となります。

※2020年9月の試験から、「1,626円」ではなく、「1,630円」となります。

(4)について

老齢厚生年金=報酬比例+経過的加算+加給年金(要件を満たした場合)

厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級もしくは2級の障害がある場合には、20歳未満の子ども)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。

なお、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上)等を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。

本問では、要件を満たすことになりますので、390,000円が加算されます。

※2020年9月の試験から、加給年金額は、「390,000円」ではなく、「390,900円」となります。

報酬比例(1,084,995円)+経過的加算(359円)+加給年金(390,000円)=1,475,354円が老齢厚生年金の額となります。

解答:(1)737,845円(2)1,084,995円(3)359円(4)1,475,354円

※令和1年度・2年度の金額は異なりますので、ポイント解説ページ等でご確認ください。

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