2024年1月に実施されましたFP2級実技試験(生保顧客資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
第1問:FP2級生保顧客(2024年1月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(55歳)は、妻Bさん(58歳) および父Cさん(77歳)との3人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X社に入社 し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、65歳の定年までX社で働くつも りであり、今後の資金計画を検討するにあたって、公的年金制度からの老齢給付につ いて理解を深めたいと思っている。 〈Aさんとその家族に関する資料〉 (1)Aさん(1968年8月13日生まれ、会社員)
(2)妻Bさん(1965年11月6日生まれ、パートタイマー)
(3)父Cさん(1946年9月10日生まれ)
※妻Bさんおよび父Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
問1
Aさんが、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2023年度価額)を計算した次の〈計算の手順〉の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。計算にあたっては、《設例》の〈Aさんとその家族に関する資料〉および下記の〈資料〉に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈計算の手順〉
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1)報酬比例部分の額(円未満四捨五入)
( ② )円
(2)経過的加算額(円未満四捨五入)
( ③ )円
(3)基本年金額(上記「(1)+(2)」の額)
□□□円
(4)加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5)老齢厚生年金の年金額
( ④ )円
問2
Mさんは、Aさんに対して、公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんは特別支給の老齢厚生年金を受給することができませんが、妻Bさんは64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます」
- 「Aさんが、65歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、かつ、65歳から老齢厚生年金を受給し、Aさんの老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額との合計額が28万円(2023年度価額)を超えた場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となります」
- 「Aさんが希望すれば、66歳以後、老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができます。仮に、Aさんが72歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は58.8%となります」
問3
Mさんは、Aさんに対して、雇用保険の介護休業給付について説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが父Cさんについて介護休業を分割して取得する場合、介護休業給付金は、介護休業を開始した日から通算して93日を限度に3回までに限り支給されます」
- 「介護休業期間中に、X社から賃金が支払われなかった場合、介護休業給付金の額は、1支給単位期間について、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の67%相当額です」
- 「介護休業期間中に、X社から休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の75%相当額以上の賃金が支払われた場合、当該賃金が支払われた支給単位期間について、介護休業給付金は支給されません」
解答・解説
問1
①について
国民年金の未加入期間32月については、保険料納付済月数には含めません。
また、60歳までの厚生年金保険の被保険者期間も保険料納付済月数に含まれます。
ですので、老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入) は、「795,000円×448/480=742,000円」となります。
②について
報酬比例部分の額は、「(28万円×7.125/1,000×144月)+(50万円×5.481/1,000×364月)=1,284,822円」となります。
③について
経過的加算額は、「1,657円×480月(上限)-795,000円×448月/480月=53,360円」となります。
④について
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(原則)である者が、特別支給の老齢厚生年金の定額部分や65歳以後の老齢厚生年金を受給できるようになった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳到達年度末までの子ども(1級・2級の障害がある場合は、20歳未満の子)がいる場合に、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。
↓
本問は、妻Bさんが年上ですので、加給年金額は、加算されません。
↓
ですので、老齢厚生年金の年金額は、「1,284,822円+53,360円=1,338,182円」となります。
解答:①742,000 ②1,284,822 ③53,360 ④1,338,182
問2
- ○
Aさんは、1961年4月2日以降に生まれていますので、特別支給の老齢厚生年金を受給することができません。
妻Bさんは、1964年4月2日~1966年4月1日に生まれていますので、64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。 - ×
Aさんの老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額との合計額が48万円を超えた場合、老齢厚生年金の一部又は全部が支給停止となります。 - ○
Aさんが72歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は「0.7%×84月=58.8%」となります。
問3
- ○
Aさんが父Cさんについて介護休業を分割して取得する場合、介護休業給付金は、介護休業を開始した日から通算して93日を限度に3回までに限り支給されます。 - ○
介護休業期間中に、X社から賃金が支払われなかった場合、介護休業給付金の額は、1支給単位期間について、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の67%相当額です。 - ×
介護休業期間中に、X社から休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の80%相当額以上の賃金が支払われた場合、当該賃金が支払われた支給単位期間について、介護休業給付金は支給されません。