2020年1月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第1問の問題と解説です。
目次
第1問:FP2級個人資産(2020年1月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問1~問3)に答えなさい。
《設例》 Aさん(39歳)は、X株式会社を2017年8月末日に退職し、個人事業主として独立した。独立から2年以上が経過した現在、事業は軌道に乗り、収入は安定している。 Aさんは、最近、公的年金制度を理解したうえで、老後の収入を増やすことのできる各種制度を利用したいと考えている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。 <Aさんとその家族に関する資料> (1)Aさん(個人事業主)
(2)妻Bさん(会社員)
(3)長男Cさん
※妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 |
問1:老齢給付
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄(1)~(3)に入る最も適切な数値を選びなさい。計算にあたっては、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>および下記の<資料>に基づくこと。なお、年金額は2019年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。
- 「Aさんが65歳に達すると、老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は( 1 )円となります」
- 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額は( 2 )円となります。なお、Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は( 3 )年以上ありませんので、老齢厚生年金の額に配偶者に係る加給年金額の加算はありません」
<資料>
問2:収入を増やすための各種制度
Mさんは、Aさんに対して、老後の収入を増やすための各種制度について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄(1)~(4)に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選びなさい。
- 「国民年金の第1号被保険者であるAさんは、所定の手続により、国民年金の定額保険料に加えて、国民年金の付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を180月納付し、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、老齢基礎年金の額に付加年金として( 1 )円が上乗せされます」
- 「国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。国民年金基金への加入は口数制となっており、1口目は保証期間のある終身年金A型、保証期間のない終身年金B型の2種類のなかからの選択となります。掛金の額は、加入者が選択した給付の型や口数、加入時の年齢等で決まり、掛金の拠出限度額は月額( 2 )円となります。なお、( 3 )に加入している場合は、その掛金と合わせて月額( 2 )円が上限となります。また、国民年金基金に加入した場合は国民年金の付加保険料を納付することはできません」
- 「小規模企業共済制度は、個人事業主が廃業等をした場合に必要となる生活資金などを準備しておくための共済制度です。毎月の掛金は、1,000円から( 4 )円の範囲内(500円単位)で選択できます」
〈語句群〉 イ.20,000 ロ.23,000 ハ.30,000 ニ.36,000 ホ.54,000 ヘ.68,000 ト.70,000 チ.72,000 リ.中小企業退職金共済制度 ヌ.確定拠出年金の個人型年金 ル.小規模企業共済制度 |
問3:公的年金制度等の各種取扱い
Mさんは、Aさんに対して、公的年金制度等の各種取扱いについて説明した。Mさんが説明した次の記述1~3について、適切なものには○を、不適切なものには×をつけなさい。
- 「Aさんは、60歳以後、老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰上げ支給を請求することができます。仮に、Aさんが62歳0カ月で老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰上げ支給を請求した場合の減額率は18.0%となります」
- 「国民年金の定額保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引がありますが、国民年金の付加保険料や国民年金基金の掛金については、前納による割引制度はありません」
- 「小規模企業共済制度の掛金は、その全額を、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます」
解答・解説
問1:老齢給付
(1)について
学生納付特例期間(30月)に関しましては、追納していませんので、年金額には反映しません。
ですので、老齢基礎年金の額は、「780,100円×450月(173月+277月)÷480月=731,343.75→731,344円(円未満四捨五入)」となります。
※2020年9月の試験からは、「780,100円」ではなく、「781,700円」となります。
(2)について
報酬比例部分:28万円(標準報酬月額)×5.481/1,000×173月=265,499.64円→265,500円(円未満四捨五入)
経過的加算額:1,626円×173月-780,100円×173月/480月=136.9…→137円(円未満四捨五入)
※2020年9月の試験からは、「1626円」「780,100円」ではなく、「1,630円」「781,700円」となります。
老齢基礎年金の額:265,500円+137円=265,637円
(3)について
Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は20年以上ありませんので、老齢厚生年金の額に配偶者に係る加給年金額の加算はありません。
※問題文上、加給年金額は390,100円となっていますが、2020年9月の試験から、「390,900円」となります。
解答:(1)731,344円(2)265,637円(3)20
問2:収入を増やすための各種制度
(1)について
国民年金の第1号被保険者が、国民年金の付加保険料を納付することができ、付加年金を受給することができる。(老齢基礎年金の上乗せ!)
↓
付加年金額は、「200円×180月(付加保険料納付月数=36,000円」となります。
(2)と(3)について
国民年金基金の掛金の拠出限度額は月額68,000円となります。
なお、確定拠出年金の個人型年金にも加入している場合には、その掛金と合わせて月額68,000円が上限となります。
(4)について
小規模企業共済の掛金月額は、1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に選択することができます。
なお、この範囲内で、掛金の増額や減額もすることができます。
解答:(1)二(2)ヘ(3)ヌ(4)ト
問3:公的年金制度の各種取扱い
1. | 〇 | 1ヵ月当たり0.5%減額されることになります。 ですので、3年間繰り上げた場合の減額率は、「36ヵ月×0.5%=18%」となります。 ※老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げる必要があります。 |
2. | × | 国民年金の定額保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引があります。 なお、国民年金の付加保険料や国民年金基金の掛金についても、前納による割引制度があります。 |
3. | × | 加入者が支払った小規模企業共済の掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除(所得控除)の対象となります。 |
解答:1.〇 2.× 3.×