2019年9月に実施されましたFP3級実技試験(保険顧客資産相談業務)の第3問の問題と解説です。
目次
第3問:2019年9月FP3級実技試験(保険顧客)
次の設例に基づいて、下記の各問(問7~問9)に答えなさい。
《設例》 X株式会社(以下、「X社」という)は、Aさん(40歳)が設立した会社である。 Aさんは、現在、従業員の退職金準備の方法について検討している。そこで、Aさんは生命保険会社の営業担当者であるMさんに相談することにした。 <Mさんの提案内容> 従業員の退職金準備を目的として、中小企業退職金共済制度(X社は加入要件を満たしている)および下記<資料>の生命保険(福利厚生プラン)を提案した。 <資料> ※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
問7:中退共
Mさんは、中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)の特徴について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄(1)~(3)に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「中退共は、中小企業の事業主が退職金を社外に積み立てる退職金準備の共済制度です。毎月の掛金は、被共済者(従業員)1人につき月額5,000円から30,000円までの16種類のなかから任意に選択することができ、その( 1 )を損金の額に算入することができます。また、新しく中退共に加入する事業主に対して、掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4カ月目から( 2 )年間、国が助成します。被共済者(従業員)が中途(生存)退職したときは、退職金が ( 3 )支給され、一時金で受け取った場合、退職所得として課税の対象となります」 |
- (1)全額 (2)1 (3)従業員本人に直接
- (1)3分の1 (2)2 (3)従業員本人に直接
- (1)全額 (2)3 (3)法人を経由して従業員に
問8:保険料払込時の仕訳
《設例》の<資料>の福利厚生プランの保険料払込時の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。
- (借方)保険料積立金600万円/現金・預金600万円(貸方)
- (借方)福利厚生費 600万円/現金・預金600万円(貸方)
- (借方)福利厚生費 300万円/現金・預金600万円(貸方)
保険料積立金300万円
問9:福利厚生プラン
Mさんは、《設例》の<資料>の福利厚生プランについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
- 「福利厚生プランは、原則として、従業員全員を被保険者とする等の普遍的加入でなければなりませんので、制度導入後に入社した従業員について加入漏れがないように注意してください」
- 「福利厚生プランを導入する際は、退職金の支給根拠を明確にするため、退職金規程を整えてください」
- 「保険期間中に被保険者である従業員が中途(生存)退職した場合、解約返戻金は退職する従業員本人に直接支給されます」
解答・解説
問7:中退共
(1)について
毎月の掛金は、被共済者(従業員)1人につき月額5,000円から30,000円までの16種類のなかから任意に選択することができ、その全額を損金の額に算入することができます。
(2)について
新規加入の場合、中退共に加入する事業主に対して、掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4ヵ月目から1年間、国が助成します。
(3)について
被共済者(従業員)が中途(生存)退職したときは、退職金が従業員本人に直接支給されます。
なお、一時金で受け取った場合は退職所得、年金受取りの場合は公的年金等控除の対象となる雑所得として取り扱われることになります。
解答:1
問8:保険料払込時の仕訳
「契約者(=保険料負担者)・満期保険金受取人=法人、被保険者=役員・従業員全員、死亡保険金受取人=被保険者の遺族」とする養老保険(福利厚生プラン・ハーフタックスプラン)の場合、
法人が支払った保険料の2分の1は保険料積立金として資産に計上し、残りの2分の1は福利厚生費として損金に算入されます。
解答:3
問9:福利厚生プラン
- 適切
福利厚生プランは、原則として、従業員全員を被保険者とする等の普遍的加入でなければなりません。(福利厚生目的のため、原則、役員・従業員全員加入!) - 適切
福利厚生プランを導入する際は、退職金の支給根拠を明確にするため、退職金規程を整えなければなりません。(遺族が受け取る保険金が、死亡退職金である!ということを明確にしていないと二重払いなどの危険性があるため) - 不適切
保険期間中に被保険者である従業員が中途(生存)退職した場合、解約返戻金は契約者である法人(X社)に支給されます。
解答:3