2023年5月に実施されましたFP2級実技試験(個人資産相談業務)の第4問の問題と解説です。
第4問:FP2級個人資産(2023年5月実技試験)
次の設例に基づいて、下記の各問(問10~問12)に答えなさい。
《設例》 個人事業主のAさん(50歳)は、2年前に父の相続により甲土地(600㎡)を取得している。甲土地は、父の代から月極駐車場として賃貸しているが、収益性は高くない。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
問10
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい。
①建蔽率の上限となる建築面積
②容積率の上限となる延べ面積
問11
Aさんが、甲土地上に賃貸マンションを建築する場合の留意点等に関する次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが、所有するマンションについて自ら建物の管理や入居者の募集、入居者との賃貸借契約を行う場合には、あらかじめ宅地建物取引業の免許を取得する必要がありますが、マスターリース契約(特定賃貸借契約)に基づき、Ⅹ社に建物を一括賃貸する場合は、宅地建物取引業の免許は不要です」
- 「AさんがX社と普通借家契約としてマスターリース契約(特定賃貸借契約)を締結し、当該契約において賃料が保証される場合であっても、Ⅹ社から経済事情の変動等を理由として契約期間中に賃料の減額請求を受ける可能性があります」
- 「不動産の収益性を測る指標の1つであるNOI利回り(純利回り)は、不動産投資によって得られる賃料等の年間総収入額を総投資額で除して算出されます。この指標では、簡便に不動産の収益性を把握することができますが、不動産投資に伴う諸経費は考慮されていないため、あくまで目安として利用するようにしてください」
問12
Aさんが、甲土地上に賃貸マンションを建築する場合の課税に関する次の記述1~3について、適切なものには○印を、不適切なものには×印をつけなさい。
- 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築し、不動産取得税および登録免許税を支払った場合、不動産所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することができます」
- 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税額の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。甲土地の貸家建付地としての価額は、当該マンションの賃貸割合が高いほど、高く評価されます」
- 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の6分の1の額とする特例の適用を受けることができます」
解答・解説
問10
①について
敷地面積×建蔽率の上限=建築面積
↓
防火地域に指定された区域内に耐火建築物等を建築する場合で、建蔽率の限度が10分の8とされている地域内ですので、建蔽率の制限がありません。つまり、建蔽率は、100%となります。
↓
ですので、
建蔽率の上限となる建築面積は、「600㎡×100%=600㎡」となります。
②について
敷地面積×容積率の上限=延べ面積
↓
前面道路(前面道路が二以上あるときは、その幅員の最大のもの。)の幅員が12m未満(本問は6m)である建築物の容積率は、「当該前面道路の幅員(6m)に一定の数値(6/10)を乗じたもの(360%)」と「指定容積率(400%)」の2つを比較して、低い方(360%)が、容積率の上限となります。
↓
ですので、
容積率の上限となる延べ面積は、「600㎡×360%=2,160㎡」となります。
解答:①600 ②2,160
問11
- ×
自ら賃貸する場合には、宅地建物取引業に該当せず、免許を受ける必要はありません。 - 〇
AさんがX社と普通借家契約としてマスターリース契約(特定賃貸借契約)を締結し、当該契約において賃料が保証される場合であっても、Ⅹ社から経済事情の変動等を理由として契約期間中に賃料の減額請求を受ける可能性があります。 - ×
NOI利回り(実質利回り)は、純収益を総投資額で除して算出される利回りで、不動産の収益性を図る指標です。
解答:1.× 2.〇 3.×
問12
- 〇
Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築し、不動産取得税および登録免許税を支払った場合、不動産所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することができます。 - ×
Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税額の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。
↓
「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額」となりますので、賃貸割合が高いほど、低く評価されます。 - 〇
Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の6分の1の額とする特例の適用を受けることができます。