公的医療保険テキスト

公的医療保険(国民健康保険、健康保険等)について見ていきます。

この分野は、本試験で出題される可能性が高いので、じっくりとこのテキストをマスターしてください。

このページに掲載している2級追加論点とは、2級を目指す方だけが学習してください。ですので、3級を目指す方は、学習する必要はありません。

このページは、ボリュームがありますので、何日かに分けて学習をしてください。

社会保険イメージ図

~注意~

無料版のテキストは、一部の論点及び解説を省略しています。

ですので、教材購入者の皆さんは、必ず、教材購入者専用ページ内にありますテキスト完成版をご利用ください。

国民健康保険

公的医療保険の国民健康保険について見ていきます。

保険者

国民健康保険は、都道府県と市区町村が共同保険者となって運営しています。

※なお、国民健康保険組合が保険者になるものもあります。

国民健康保険の対象者

健康保険の対象者(会社員等)とならない自営業者、年金生活者、健康保険の扶養でなくなった人などが、国民健康保険の対象者となります。

なお、国民健康保険については、健康保険とは異なり、被扶養者という制度はありません。

国民健康保険の保険料

国民健康保険の保険料は、「医療分保険料」、「後期高齢者支援金分保険料」、「介護分保険料(40歳以上65歳未満の人に限ります。)」の3つの合計額となります。

なお、国民健康保険の保険料の金額は、市区町村によって、異なります。

所得が多いほど、また、加入者数が多いほど国民健康保険の保険料は、高くなっていきます。

国民健康保険の各年度における保険料(税)には、最高限度額が定められています。

国民健康保険の保険料は、健康保険(会社と半分ずつの負担)と異なり、全額自己負担となります。

国民健康保険の保険料は、所得割や均等割等により計算されることになります。

給付内容

国民健康保険については、健康保険と異なり、原則、傷病手当金と出産手当金の給付はありません

国民健康保険では、被保険者の業務上の疾病、負傷についても、労働者災害補償保険(労災保険)の給付等がある場合を除き、保険給付の対象となります。

健康保険とは

公的医療保険の健康保険について見ていきます。

健康保険は、病気、けが、出産、死亡等といった事態に備えるための公的な医療保険制度です。

健康保険には、「全国健康保険協会が保険者である全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「健康保険組合が保険者である組合管掌健康保険(組合健保)」があります。

健康保険の対象者

会社員は、健康保険に加入し、被保険者となります。

被保険者(会社員)により生計を維持されている者で、「年収130万円(60歳以上・障害者は180万円)未満であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満」のものは、被扶養者としてその保険の適用を受けることができます。

【補足:ここも覚える】←2級追加論点(3級は、学習する必要なし)

アルバイトやパートの方であっても、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である人は、健康保険の被保険者となります。

なお、4分の3未満であったとしても、次のすべての要件を満たす方は、健康保険の被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
  • 雇用期間が継続して1年以上見込まれること。
  • 賃金月額が88,000円以上であること。
  • 学生でないこと。
  • 常時501人以上の従業員がいる企業で勤務していること。

健康保険の保険料

保険料は、収入に比例し、収入が高ければ、健康保険の保険料も高くなります

被保険者の標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けた金額が、健康保険の保険料となります。

なお、その保険料は、事業主と被保険者で半分ずつ負担することになります。これを労使折半といいます。

【補足:ここも覚える】

  • 4月~6月の月平均給与額を等級にあてはめます。その等級の金額が、標準報酬月額となります。標準報酬月額の上限は139万円(第50等級)で、下限は5万8千円(第1等級)です。
  • 賞与の1,000円未満の端数を切り捨てた額が、標準賞与額となります。標準賞与額は、上限(573万円)があります。
  • 協会けんぽの保険料は、都道府県によって異なることになります。
  • 40歳以上65歳未満の人の保険料は、介護保険料分が上乗せされることになります。
  • 産前産後休業期間(産前42日等、産後56日のうち、労務に従事しなかった期間)の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除されます
  • 満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間についての保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除されます

主な保険給付の内容等

家族療養費

健康保険の被保険者が業務以外の事由により病気やけがをしたときは、健康保険で、「診察」、「薬剤の支給」、「手術」、「病院・診療所への入院」などを受けることができます。ただし、全額が無料になるわけではなく、一定割合を自分で負担する必要があります。

【自己負担割合】

  • 小学校入学前まで→自己負担割合は、2割となります。
  • 小学校から70歳未満まで→自己負担割合は、3割となります。
  • 70歳から75歳未満まで→自己負担割合は、2割(平成26年3月以前に70歳になっていた方は、1割。)となります。ただし、現役並み所得者の自己負担割合は、3割となります。

高額療養費

同一月に同一の医療機関の医療費が高額になることにより、自己負担限度額を超えた場合、超えた分のお金が払い戻されることになります。

なお、保険外の診療、差額ベッド代・食事代などについては、高額医療費制度の対象外となります。

なお、年齢や所得に応じて、本人が支払う医療費の上限が定められています。

↓70歳未満の自己負担限度額(平成27年1月診察分から)の表

所得区分自己負担限度
年収約1,160万円~
(標準報酬月額83万円以上)
252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収約770~約1,160万円
(標準報酬月額53万円~79万円)
167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収約370~約770万円
(標準報酬月額28万円~50万円)
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
~年収約370万円
(標準報酬月額26万円以下)
57,600円
住民税非課税の方35,400円

【例題】

60歳のAは、10月の保険診療に係る総医療費が50万円であり、Aの標準報酬月額は35万円であった。この場合、健康保険の高額療養費制度によって受けることができる払戻し金額は、いくらですか?上の表を使って求めてください。なお、多数該当および世帯合算については考慮しないものとします。

【解答】

  1. Aは、60歳なので、医療費の自己負担割合は、3割となります。
    よって、自己負担額は、「50万円×10分の3=15万円」となります。
  2. Aの標準報酬月額は「35万円」なので、上記の所得区分の「標準報酬月額28万円~50万円」の算式により自己負担限度額を求めていきます。
    よって、「80,100+(500,000-267,000)×1%=82,430円」が、自己負担限度額となります。
  3. 自己負担額-自己負担限度額=払戻し金額となります。
    よって、「上記1-上記2=67,570円」が、戻ってくることになります。

保険外併用療養費←2級追加論点

保険が適用される保険診療と保険が適用されない保険外診療の併用は、原則、禁止となっており、全額が自己負担となります。

ただし、保険外診療を受ける場合においても、「評価診療(先進医療等)」と「選定診療(差額ベッド等)」については、保険診療との併用ができ、通常の治療と共通する部分(診察料等)の費用については、一部負担金を支払っていき、後は、保険外併用療養費として健康保険から給付が行われます。

傷病手当金

傷病手当金は、病気やけがにより会社を休んだときに、被保険者等の生活を保障するために設けられた制度です。

1.傷病手当金の支給条件

以下の要件に該当した場合に、傷病手当金が支給されます。

  • 業務外の事由による病気やけがのための療養により仕事をすることができず、会社を休む。
  • 会社を連続して3日間(待期期間と言います。)休んだときに、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
  • 会社を休んでいたとしても給与の支払いがなされていた場合には、傷病手当金が支給されません。ただし、傷病手当金の額よりも給与の額が少ないときには、傷病手当金の額と給与の額との差額が支給されることになります。

2.傷病手当金の支給額

欠勤1日につき支給されることになる傷病手当金の額は、以下の算式により求めることができます。

支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2

3.傷病手当金の支給期間

傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。

【例題】

Aは、病気により20日間、会社を休みました。Aの支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均は36万円です。この場合、いくらの傷病手当金が支給されますか?なお、休んでいる間の給与は、支給されていません。

【解答】

  1. 1日の支給額:36万円÷30×3分の2=8,000円が、1日あたりの支給額となります。
  2. 支給日数:20日-3日=17日( 3日間については、待期期間となりますので、この期間中については、傷病手当金が支給されません。よって、3日を差し引くことになります。)
  3. 支給額:1日あたりの支給額(上記1)×支給日数(上記2)=136,000円が、傷病手当金として支給されることになります。

出産手当金

被保険者が出産のために会社を休んだときに、被保険者等の生活を保障するために設けられた制度です。

1.出産手当金の支給条件

  • 被保険者が出産のために会社を休み、休んでいる間に給与の支払いを受けなかったときには、出産の日(実際に出産した日が予定日後のときには、出産予定日となります。)以前42日(多胎妊娠のときには、98日となります。)から出産の翌日以後56日までの範囲内で、会社を休んだ日数分の出産手当金が支給されることになります。
  • 出産のために会社を休んでいたとしても給与の支払いがなされていたときには、出産手当金が支給されません。ただし、出産手当金の額よりも給与の額が少ないときには、出産手当金の額と給与の額との差額が支給されることになります。
  • 妊娠4ヵ月以上(85日以上)の出産です。(なお、早産、死産なども含みます。)

【補足:ここも覚える】

  • 出産日については、出産の日以前の期間に含まれることになります。
  • 出産が予定日より遅れたときには、その遅れた期間についても出産手当金が支給されることになります。
  • 傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多いときには、傷病手当金の額と出産手当金の額との差額が支給されることになります。

2.出産手当金の支給額

欠勤1日につき支給されることになる出産手当金の額は、以下の算式により求めることができます。

支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2

【例題】

Aは、出産する前に20日間、出産した後に300日間、会社を休みました。Aの支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均は36万円です。この場合、いくらの出産手当金が支給されますか?なお、休んでいる間の給与は、支給されていません。

【解答】

  1. 1日の支給額:36万円÷30×3分の2=8,000円が、1日あたりの支給額となります。
  2. 支給日数:20日(出産前は、42日が限度となります。)+56日(出産後は、56日が限度となります。)=76日
  3. 支給額:1日あたりの支給額(上記1)×支給日数(上記2)=608,000円が、出産手当金として支給されることになります。

出産育児一時金(家族出産育児一時金)

出産育児一時金は、被保険者及びその被扶養者が出産したときに、1児につき42万円が支給されることになります。

【補足:ここも覚える】

  • 産科医療補償制度に加入されていない医療機関などで出産したときには、42万円ではなく、39万円(平成27年1月1日以降の出産は40.4万円)が支給されることになります。
  • 妊娠4ヵ月以上(85日以上)の出産です。なお、早産、死産なども含みます。

退職後の医療保険

会社を退職した後、公的医療保険に加入する方法として以下のものがあります。

  1. 健康保険の任意継続被保険者
  2. 国民健康保険
  3. 健康保険の被扶養者になる

任意継続被保険者

会社を退職すると、被保険者としての資格を喪失することになります。

ただし、以下の要件を満たすことにより、継続して被保険者となることができます。この場合、保険料については、全額自己負担となります。

なお、任意継続被保険者として加入することができる期間は、退職後2年間となります。

  1. 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること。
  2. 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に、申請していること。

【補足:ここも覚える】

  • 任意継続被保険者である間は、原則、在職中の被保険者が受けられる保険給付と同様の給付を受けることができます。しかし、傷病手当金や出産手当金については、支給されません。
  • 任意継続被保険者に所定の要件を満たす配偶者や子がいるときには、所定の手続きをすることにより、それらの者を健康保険の被扶養者とすることができます。
  • 保険料は、全額自己負担となります。平成29年度の健康保険の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は、28万円となっています。

国民健康保険

国民健康保険の被保険者の資格取得の届出は、原則として、資格を取得した日から14日以内に行う必要があります。

後期高齢者医療制度

75歳になると、自動的に、健康保険の被保険者・被扶養者、国民健康保険の被保険者でなくなります。そして、後期高齢者医療制度の被保険者となります。

後期高齢者医療制度の場合、被扶養者という制度はありません。

後期高齢者医療制度の内容

  1. 75歳以上の人(一定の障害がある人については、65歳以上75歳未満の人。)が後期高齢者医療制度の対象者となります。
  2. 医療機関窓口での自己負担割合については、1割となります。ただし、現役並み所得者の自己負担割合については、3割となります。
  3. 保険料については、都道府県によって異なります。
  4. 後期高齢者医療制度の運営主体は、都道府県単位で設立された「後期高齢者医療広域連合」であり、保険料の徴収や給付申請の受付等は市町村が行っていきます。
  5. 公的年金などの支給額が年額18万円以上等であるときには、保険料は、年金から引き落とされることになります。これを特別徴収といいます。なお、公的年金などの支給額が年額18万円未満等であるときには、納付書で保険料を納付していきます。これを普通徴収といいます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加